猿滝谷
それは、とあるHPの記事がきっかけだった。

島根県浜田市金城町波佐にある小猿の滝に関する記事だったのだが、その中の「近くには大猿と呼ばれる滝もあるらしい」という記述で、興味が無ければ何気なく読み流してしまいそうな記事だった。

これは私にとっては聞き捨てならないジャンルに属する記事なのだが、詳細は全く謎に包まれているし、ましてや「ツキノワグマ高密度生息地」の険しい沢登りともなると、単独での「大猿の滝」挑戦はいささかヤバいものがあった。

だが、この日「島根の鉄人」滝花さんのご支援を受け、晴れて大猿探索が実現した。わざわざ有給を取ってまでお越し下さった滝花さんにはこの場を借りて深く御礼申し上げたい。

さて、この日の待ち合わせ場所である浜田市金城町波佐の「エクス和紙の館」で滝花さんと合流し、県道波佐芸北線を周布川(すふがわ)沿いに上流方面に向かうと、やがて県道沿いにある小猿の滝入口に着く。
せせらが滝
せせらが滝から、猿滝谷を400m遡上すると小猿の滝がある。

これから熊の領域を侵犯するので、一応鈴を身に付け、まず県道から川に降り、周布川を渡河(橋などありませんよ)して対岸に渡る。そこから小猿の滝までは踏跡が明瞭なので何ら問題は無い。
手前にある滑状の滝
この滝前で渓流を右岸に渡り、そこから斜面を滝上まで登る。
上から見た滑滝
他地域では珍しくないのだろうが、島根ではあまり見かけないイワタバコがこの辺りには咲くようなので来年また来てみたい。
小猿の滝 この日は通過点に過ぎない
この日最大の難関は、この滝を越えて上流に行くことだった。滝の周囲は切り立った崖になっているので、そうした場所を登るノウハウと装備がなければとても滝の直登は無理だ。

そういう訳なんで、滝の少し手前から左岸の急斜面を登って小猿の滝を高巻きにし、上流に向かうコトになる。奥匹見峡でも経験したのだが、これがなかなか大変で、結構体力を使います。掴めるモノは枝だろうが蔓だろうが何でも掴んで登っていく訳で、なかなかの急斜面でもあるし、滑落すれば当然タダでは済まない高さでもあるんで緊張するのです。これがまた楽しいのも確かだが・・・
何とか小猿の滝の上流に出た ジンジソウ
人が踏み込んだ形跡が全く無い 小滝が連続する沢を奥に進む
行く手に5m前後の滝が沢山現れる 登れそうなポイントを探しながら遡上していく
滝前でルートを探る滝花さんの雄姿。
1ヶ所高巻きにしないと進めない滝があったが、他は何とかクリアできる範囲。しかし油断をすると、すぐに怪我に直結するんで足元には相当神経を使う。
伸びているのはロープではなくて蔓 深い淵を持つ滝もいくつか見られた
横から滝となって合流してくる沢 連続する滑状滝
行けども行けども「大猿の滝」と思しき、規模の大きな滝は姿を見せず・・・
ついに平坦な流れの最上流部に来てしまった・・・
ここまで県道からの所要時間は1時間半。周囲の地形を見渡すと、もはや滝など無さそうで、結局小猿の滝の上流に「大猿の滝」があるという読みは大ハズレ。

5m程度の落差の滝は沢山見たが、「大猿」というからには「小猿」を凌ぐ規模でなければならないハズなんで「大猿の滝は小猿の滝の上流には無い」という結論になる訳だ。

仕方がないので引き返さねばならないのだが、同じルートを引き返す路程は当然楽ではない。下っていく時の方が、登るよりも怖い箇所も少なからずあるものだ。
小猿の滝を上から見た図 またいつか来れる?
復路は急斜面を右岸から下って小猿の滝の下流に出る。5月の匹見を思えば(あの時はへタレてました)体力的にも断然余裕で、何とか怪我もなく無事に戻ってこれた。
周布川を渡っていく滝花さん
戻りも1時間半の所要時間で、往復3時間の沢歩きであった。
大猿の滝は残念ながら無かったのだが、私自身は沢登りを結構楽しめたんで大満足と言っていい。

蛇足ながら補足
奥匹見峡上流に比べると難易度は低めですが、少なからず危険箇所があります。
事故を想定した場合、単独による挑戦は危険です。小猿の滝までは踏み跡も明瞭なので容易に行けますが、最初の県道から周布川を渡河する際に注意を要します。川中の石は不安定だし、流れが割りと早くバランスを崩しやすいので、すべり止めの付いた靴が良いかと思います。
 夫婦滝に行く
 
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